紛らわしさは、そこらじゅうに潜んでいる。
昔、居酒屋で女の子とふたりで飲んでいて
「トーク、美味い」と言われ
いい気分になっていたら、
実際は「豆腐、美味い」と
食べていた豆腐を美味いと言っただけだった...
というオチがまっていた
ということがあったような、なかったような。
いまのは作り話なのだけど、
世の中には、紛らわしさが
そこらじゅうに潜んでいる。
今日もその紛らわしさのせいで、
ちょっぴり恥ずかしい思いをした。
赤信号で停まった車の運転手が
僕と目が合うと右手を上げた。
「おー、ひさしぶりー」
とでも言ってるかのようなしぐさだった。
運転手の顔がはっきり見えなかったけれど
無視してしまうのは悪いなーと思い、
「誰だか分からないけど、久しぶりー」
という思いを込めて手をあげようとしたら、
運転手の右手はサンバイザーに手をやり
太陽のまぶしさを防ぐために
サンバイザーをおろしたのだ。
空中に離れられたボクの右手は目的を失い、
不自然な軌道を描いて僕の頭に辿り着き、
慰めるかのように髪の毛を撫でたのだった。
紛らわしいったら、ありゃしない。
また明日。バイビー